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10年以上で4.3倍のリスク 喫煙と歯周病

 かつてタバコは嗜好(しこう)品で、喫煙は単なる習慣であり、やめられないのは本人の意思の問題だと思われてきました。

 しかし現在では、たばこが止められないのは、心理的依存とニコチンに対する身体的依存より成り立つ薬物依存症の一つ、「ニコチン依存症」という精神疾患として認識されています。

 タバコの煙の中には、約4000種類の化学物質が含まれています。そのうちの約200種類が有害物質で、発がん物質が約70種類と言われており、口腔(こうくう)がんの原因の約80%は喫煙だと考えられています。

 また喫煙者は口臭があり、ヤニがついて汚いだけではなく、歯周病になりやすい上に悪化しやすく、さらに治療しても治りにくいことが分かっています。

 歯周病になる割合は1日10本以上喫煙すると5.4倍、10年以上吸っていると4.3倍に上昇します。

 タバコの煙に含まれる「一酸化炭素」は組織への酸素供給を妨げますし、「ニコチン」は血管を縮ませるので、組織が酸欠や栄養不足状態になります。また、ニコチンは体を守る免疫の機能も妨げますので、病気に対する抵抗力が落ちたり、アレルギーが出やすくなります。さらに傷を治そうと組織を修復してくれる細胞(繊維芽細胞)の働きまで抑えてしまうので、歯周病は治りにくくなるのです。

 また、「ヤニ」という形で歯の表面に残るので、歯がざらざらして細菌が張り付きやすくなるのはもちろん、いつまでも口の中や歯肉にニコチンが染み出し続けることにより、歯周病を悪化させ続けるのです。

 喫煙はニコチンの血管収縮作用などにより、歯肉の腫れや出欠が見かけ上抑えられ、歯周病に気付きにくくなるのも厄介です。もちろん禁煙することで、これらのリスクは軽減します。喫煙者は歯周病のケアが重要です。こまめに受診すると共に、禁煙への挑戦を検討してみてはいかがでしょうか。

(鹿児島県歯科医師会 情報・対外PR委員 竹脇秀一)

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