むし歯の治療で銀歯を詰めたり、かぶせたり、あるいは抜けた部分を補うために橋渡し(ブリッジ)を入れている人は多いと思います。保険治療では、この銀歯の材料として金銀パラジウム合金(金パラ)が多く使われています。
この金パラの市場価格が昨年の9月頃から4割近く上がりました。保険治療の公定価格よりも高くなり、歯科医院では逆ザヤ(赤字)になることもあります。そうなると金属を使った治療を手控えたり、質の劣った銀合金を使用したりする可能性があり、患者さんに対して悪影響が与えることが懸念されます。
以前の公定価格の改定は2年に1度でしたが、最近はその変動が大きくなったことから、今では6カ月ごとにプラスマイナス5%変動すれば随時改定されるようになっています。しかし、随時改定では合金価格ではなく金、銀、パラジウムそれぞれの素材価格を調査していることや、対象期間が改定を行う時期からさかのぼった過去6カ月間(改定がなかったときは12か月間)となっているために、公定価格と実際の市場価格に差が出てしまいます。
価格がこれほど高騰した理由は、金とパラジウムの価格が高騰したからです。特にパラジウムは産出国が南アフリカ、ロシアなど数力国しかなく、産出量も限定されており、市場規模も小さいことから、投機規模によって簡単に価格が上昇します。
自動車の排ガス対策に需要の80%が使われており、中国などでの自動車生産量の急増により価格が高騰しているのです。
こうしたことから小臼歯に対して金パラ以外の材料も保険導入され、今では大臼歯にも適応は拡大されましたが、すべての歯を代替できるものでもなく、制限も多いのです。この材料問題が早期に解決されることが望まれます。
(鹿児島県歯科医師会情報・対外PR委員 石橋貴樹)
銀歯材料の価格高騰 患者への悪影響を懸念