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関連痛 違う部分が痛むことも

 歯の痛みを感じて歯科医院を受診したものの、さてどの歯が痛いのか自分で特定できないことが意外とよくあります。

 口の中を精密に診査して、例えば、上の親知らずのむし歯が原因の痛みなのに、なぜか同じ側の下の奥歯が痛いと訴えられる場合があります。そして、先に上の親知らずを抜いてしまったら、下の歯の痛みもすっかり消えてしまった、ということも少なくありません。このような「痛みの誤認」はなぜ起こるのでしょうか。

 わかりやすい例として「アイスクリーム頭痛」があります。アイスやカキ氷を急いで食べると、血管が膨張するとともに喉付近の三叉神経などを刺激し、喉の痛みではなく頭に痛みが起こる現象です。

 この他にも、心筋梗塞のときに上腕部が痛い、内臓の痛みなのになぜか腰が痛いと感じてしまう、といったことも同様に、脳が痛む場所を正しく特定できない例として知られています。このような痛みの錯誤のことを医学用語で「関連痛」と呼びます。12の脳神経の中で最大の三叉神経は、関連痛が最も起こりやすい神経と言われています。

 三叉神経は、文字通り眼神経、上顎神経、下顎神経の三つの神経の枝に分かれて脳に繋がっています。そしてその支配領域を飛び越えて脳が認識することにより、上顎と下顎の痛みの錯誤が起こります。場合によっては、眼神経領域の神経痛の関連痛で、何ともない歯や歯ぐきに痛みを感じることもあるのです。

 痛みは本人にしか分かりませんが、関連痛により痛む場所の特定を誤ることがあることをどうか知っておいてください。歯科医療においては、症状の確認を自覚症状とエックス線写真などの客観的な検査データの双方から総合的に検討し、適切な診断を行っております。

(鹿児島県歯科医師会情報・対外PR委員 鬼塚 一徳)

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