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がんのリスク検査可能に 唾液の新知識

 唾液は血液からできていることを知っていますか。唾液のもとは毛細血管の血液からの間質液として生じ、唾液腺で調整されて口の中に分泌されます。ですから唾液の成分には血液由来のさまざまな酵素や因子、ミネラルなどが含まれているのです。

 唾液の一般的は効能や作用について簡単にまとめると、消化酵素(アミラーゼなど)が食物中のでんぷんをブドウ糖に変え、食物中の塩分を薄め(希釈)、酸やアルカリを中和します。さらには、口の中を洗浄して清潔に保ち、抗菌作用を持つリゾチームなどの酵素、免疫グロブリン、ラクトフェリンなどにより、口内に侵入した細菌やウイルスの繁殖を防ぎます。

 近年注目されたのが、歯の表層に起こるごく初期の虫歯を唾液中のカルシウムなどで修復する作用があることです(再石灰化)。他にも、口の中が潤って会話ができ、上皮成長因子によって傷を治すことなどが知られています。

 唾液は成人なら1日あたり11.5リットルも分泌され、そのほとんどが水分です。先に挙げたリゾチーム、免疫グロブリンなどの成分はほんの0.5%に過ぎず、まだまだ解明されていない成分や作用、効能があり、研究が進められています。

 唾液の効能の一つは老化防止です。上顎の奥歯の粘膜あたり(耳下腺開口部からパロチンという成長ホルモンの一種が分泌されていることが報告され、同じく唾液に含まれるペルオキシダーゼの抗酸化作用と相まって、若返り効果が期待できます。

 もう一つは、唾液を採取してがんのリスク検査ができるようになってきたことです。もちろん、がんの確定診断にはCTやMRIでの画像診断などが欠かせないのですが、発見しにくく5年生存率の低いすい臓がんのリスクを唾液で簡単に知ることができるなら意義があると思います。

 さあ、よくかんで食べて唾液をたくさん出しましょう。

(鹿児島県歯科医師会 情報・対外PR委員 鬼塚一徳)

がんのリスク検査可能に 唾液の新知識
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