「むし歯はむし歯菌のせい」と聞いたことがありませんか?かつては歯科医の間でも、むし歯菌による感染症と思われていました。しかし、現在では不適切な食生活による口の中の細菌バランスの乱れが原因と分かり、生活習慣病と考えられています。予防や治療の基本は規則正しい食生活であり、日々のセルフケアの味方がフッ化物配合歯磨き剤です。
近年「フッ素は体に悪い」といった不安をあおる情報が散見されます。しかし、適正量を使用する限り、人体に悪影響はないことが多くの研究で証明されています。
フッ化物がむし歯に有効なのは、主に二つの作用によります。まず、酸で溶けかけた歯の表面の修復(再石灰化)を促します。次に、歯の質そのものを強化し、酸への抵抗力を高めます。これらの効果は科学的根拠に裏付けられており、フッ化物の利用は最も効果的なむし歯予防法の一つとして世界的に認知されています。
一昨年、日本の主要な歯科関連4学会は、より効果を高めるための利用法を提言しました。要点は、「高濃度のものを使い、しっかりとどめる」です。
具体的には、歯が生えてから2歳まではフッ化物濃度1000ppmの歯磨き剤を米粒程度、3~5歳はグリーンピース大、6歳以上は高濃度の1450ppmを歯ブラシ全体(1.5~2センチ)に付けて使うことを推奨しています。
使用法の鍵は、歯磨き後のうがいを10ミリリットル程度の少量の水で1回にとどめること。これで有効成分が口腔内に長くとどまり、効果を発揮します。
むし歯はフッ化物の欠乏症ではありません。あくまで基本は規則正しい食生活です。フッ化物配合の歯磨き剤を正しく活用し、生涯にわたる健康を守っていきましょう。
(鹿児島県歯科医師会 社会保険委員会委員 堀川 大樹)
歯の修復と質を強化 フッ化物配合歯磨き剤
