歯を失った部分を補う治療法として、あごの骨に人工歯根を埋め、人口歯を付けるインプラントは広く普及してきました。見た目やかみ心地が自然で、多くの方が快適に使っています。しかし気を付けなければならない点があります。それは「インプラント周囲炎」です。
これはインプラントを支える歯ぐきや骨に炎症が起こる病気です。最初は歯ぐきが赤く腫れたり、歯みがきの際に血が出たりする軽い症状から始まります。進行するとインプラントを支える骨が溶け出し、最悪の場合はインプラントが抜け落ちてしまうことがあります。天然の歯と比べ、炎症が進みやすいのが特徴です。
原因は歯周病と同じく、インプラント周囲のポケットにたまる細菌です。特に歯みがき不足や喫煙習慣、糖尿病、かむ力が強い、歯周病があるといった人は、注意が必要です。自覚症状が少ないまま進行することが多く、「痛みがないから大丈夫!」と油断すると取り返しがつかなくなる場合もあります。
治療は歯科医院でのクリーニングや、専用器具による汚れの除去が基本です。進んでしまった場合は炎症部分を取り除いたり、骨を再生させたりするなどの外科的な処置が必要になる場合があります。重症になるとインプラントを除去せざるを得ません。
大切なのは予防です。毎日の丁寧な歯みがきに加え、歯間ブラシなどの補助用具の活用も欠かせません。そして、必ず歯科医院での定期的なチェックを受けてください。インプラントは「入れたら終わり」ではなく、長持ちさせるために日々のセルフケアと専門的なケア・検査が必須です。インプラントを快適に使い続けるために、ぜひ口の健康に目を向けてください。
(鹿児島県歯科医師会 常務理事 山下 大輔)
定期的なケアで予防を インプラント周囲炎