歯のはなし

味覚障害 亜鉛の摂取不足が一因

 味覚は五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の一つで、甘み、酸味、塩味、苦味、うま味などを感じ、食事を安全においしくいただくための大切な感覚です。味覚を感じる器官は主に舌ですが、感覚器は口の奥や喉の粘膜に広く分布しています。

 近年、新型コロナウイルス感染症の症状の一部に嗅覚・味覚障害があることが知られています。しかし、味覚障害は感染症とは関係なく起こりえますので、その原因や対処法について説明します。

 まず、味覚低下や味覚消失の明確な原因は、亜鉛の摂取不足です。亜鉛が不足すると味覚を感じる細胞の再生が遅くなり、働きに影響が出ます。これは年齢別にかかわらず、加工食品中心の偏食やダイエットによっても起こります。

 亜鉛は、カキ、牛肉、ウナギ、ゴマ、海藻、大豆、卵黄、アーモンドなどに多く含まれます。亜鉛不足以外の原因としては、舌の炎症や舌の表面に白色の舌苔(ぜったい)が分厚く付着し、味細胞の働きを邪魔する場合があり、多くは口腔乾燥症(ドライマウス)を伴います。

 他にも、年齢が高くなるにつれて亜鉛の摂取・吸収率が低下しますし、それだけでなく高齢になってかかる全身疾患や、疾患に伴う薬剤の使用によって味覚障害が引き起こされます。薬の中に含まれる物質と亜鉛が結びつき、亜鉛の吸収が妨げられたり、亜鉛が過剰に排出されることがあるからです。

 さらに味覚異常の原因として、うつ病やストレスなどの心因性疾患やかぜによる風味障害もあります。味覚障害の原因は多岐に及びます。食生活を正しても味覚に異常を感じた場合、舌にできものや炎症などが疑われるケースは歯科・口腔外科を、それ以外では耳鼻咽喉科を受診して検査、診断を受けられることをお勧めします。

(鹿児島県歯科医師会 情報・対外PR委員 鬼塚一徳)

味覚障害 亜鉛の摂取不足が一因
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