歯のはなし

薬による顎骨壊死 投薬前に口腔内の確認を

 骨粗しょう症や骨転移があるがんの治療に広く使われるビスホスホネート(BP)やデノスマブといった薬で、難治性の顎骨(あごの骨)壊死が発生することが報告されています。これらの薬剤で症状が起きたものを骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)といいます。

 その発生頻度はがんで1~2%、骨粗しょう症で0.01~0.1%と非常に低いですが、3~4年以上の長期にわたり薬を使っている人では高くなります。そして一度起こると顎骨の露出、口腔のはれ、痛み、膿が出る、骨が壊死するなどの症状が起こり、日常生活に大きな支障をきたします。

 人の体は破骨細胞が骨を吸収し、造骨細胞が新しい骨を造る「骨代謝」を常に行っていますが、前述の薬剤は破骨細胞による骨吸収を抑制します。この作用は骨粗しょう症やがんの骨転移には有効な一方で、骨代謝の低下や免疫機能の低下、血管新生抑制などにより骨壊死を誘発すると考えられています。

 ARONJがなぜ顎骨に起こるのかは明らかになっていませんが、口腔内特有の要因が考えられています。それは歯周病やむし歯による炎症、合わない入れ歯による傷、抜歯などによる傷、口腔衛生状態不良などで、口の中の状態が良くないと感染しやすいということです。

 従って、歯科治療にあたりARONJの発症を防ぐには、何より感染予防が重要となります。また現在投薬を受けている患者も歯科治療時には休薬しないのが一般的になっていますが、これからBPやデノスマブを使用することになったなら、その前にきっちりと歯科治療をしておくことをお勧めします。

 この病気は投薬するところが医科で、病気が発見されるところが歯科という特殊性もあって、医科と歯科が連携することがとても重要になります。

(鹿児島県歯科医師会 情報・対外PR委員 石橋貴樹)

薬による顎骨壊死 投薬前に口腔内の確認を
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